「独立」は技術者にとってどんなメリット、デメリットがあるのか。会社を辞めて独立し、技術事務所を営む先輩技術者が、自身の体験をもとに紹介します。

働き方の多様化。技術者の選択肢も増えている

技術士事務所「ソメイテック」の代表をしている大薗です。会社員時代は主に薄膜技術に携わり、2016年に38歳で前職を退職して独立しました。今の活動の柱は製造業向けの技術開発支援です。

技術者の働き方が多様化している現在。企業や研究機関などで力を発揮する以外に、フリーランスで活動する形も生まれています。周りを見渡しても、技術者の働き方に対する選択肢は増えており、早期に独立開業したいと考える方も多くなったように感じます。

しかし独立にはたくさんのメリットがある一方、注意しなければいけないデメリットもあります。独立後の人生を有意義なものにするためにも、まずはメリット・デメリットについて知っておきましょう。

メリット

独立で得られるメリットはいくつもあります。私自身の経験から感じていることとしては、「仕事を自分で決められる」「幅広い知識とマネジメント力がつく」「収入面の目標が自由に設定できる」といった点が大きなメリットです。

【1】 仕事を自分で決められる

独立すると「どのような仕事をどのくらい行うか」について、自分自身で決めることができ、また仕事の相手も選べます。そのため仕事内容や人間関係が合わないというストレスから解放され、自分らしい仕事に取り組める点が大きなメリットです。

また、例えば「執筆活動で自分の足跡を世に残したい」といった、会社員時代にはなかなかチャレンジできなかったような仕事も自由に行えます。

 【2】幅広い知識とマネジメント力がつく

独立後は、会社員時代以上に知識の幅が広がります。複数の顧客とのプロジェクトが同時進行することもあり、顧客の業界や求めるものも様々。過去の知識だけで対応できることは少なく、都度インプットが必要です。また大きなプロジェクトであれば、複数のパートナーと連携することも。その他、営業活動や、事務・経理処理なども自身で行います。

会社員時代は特定の分野のみで仕事をすることが多かったですが、独立後はいろいろな相談をいただく機会が出てきます。またジャンルの違うタスクを同時並行したり、複数の方と同じ目標に向かって動けるよう意思疎通を図ったりと、仕事を通じて幅広い知識とマネジメント力が身につき、強化されていきます。

【3】収入面の目標が自由に設定できる

会社では組織内の個人が自分の給与を決定することは、基本的にできません。フリーランスの場合は、商品価格や受注量、経費も自分で決めるため、自分さえ努力すれば希望する収入を得るのも夢ではありません。また副業という形をとらずとも、新しいビジネスへの挑戦が自由にできます。

このように独立・開業すると様々なメリットがあります。自分の理想の働き方を実現したい、チャレンジしたいという意欲の強い方に合っているでしょう。

デメリット

独立にはデメリットも伴います。私が感じた主なものは「何でも自分で決めないといけない」「多くのタスクを管理しないといけない」「収入の保証がない」といった3点です。

【1】何でも自分で決めないといけない

独立すると、どんな仕事をするのかを自分自身が決めなくてはいけません。自分が提供する商品の価格も、営業や販売の方法などの業務プロセスも自分で決める必要があります。仕事を受けるかどうか、誰とパートナーシップを組むかなども決めなくてはいけません。

また個人的な不祥事が事業活動に致命的な影響を及ぼすため、行動に大きな責任が掛かります。これらは、人によっては大きなストレス源になるでしょう。

【2】多くのタスクを管理しないといけない

独立するとやることが本当に多くなります。顧客毎にタスクが細分化されるので、トータルだと膨大な数になることも少なくありません。また「技術」とは一見関係のないような情報収集や営業活動、WEBでの情報発信、業務パートナーとの関係づくりなどにも取り組んでいかないと、良い仕事の実現から遠ざかってしまいます。

【3】収入の保証がない

当然のことですが、独立後は自分で仕事を獲得しなくては収入になりません。最悪の場合「働けるのに収入がゼロ」という状態も起こり得ます。収入を保証してくれるものはなく、仕事がしたいなら自分で獲得する方法を考えなくてはいけない……。また受注できても良い仕事ができなければ継続・発展することはできません。この点が組織に勤める場合との最大の違いで、厳しい現実もあります。

これらのデメリットは、実は全てメリットの裏返しです。独立で変化することをどう感じるかが独立するかどうかの一つの判断材料になると思います。

結び

独立のメリットとデメリットを紹介しましたが、強い意志があれば、どんな問題も解決していけます。どんなデメリットも裏を返せば成長機会であり、チャンスになります。

独立といっても初めから一人で何でもできるわけではありません。特に技術系の方の多くは(私もそうですが)営業活動に慣れていません。そのため、仕事の獲得を支援するサービスをうまく活用するのも良い手段でしょう。契約や経費などの業務プロセスをサポートしてくれるサービスもあり、独立する方にとっては、大きな助けになると思います。

自分にはどんな働き方があっているのか、この記事がぜひ今後のキャリアに役立っていけばと思います。

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