独立を考えるにあたり、メリット・デメリットや実態が分からず、不安を抱える人も多いことでしょう。今回は独立して活躍する技術者に、独立する前と後で1日のスケジュールがどう変わったか、具体的に教えてもらいます。

スケジュールの前に……独立するきっかけは?

 こんにちは、長谷川です。川崎重工株式会社の関連企業やシスメックス株式会社での勤務を経て、現在は自身で立ち上げた合同会社で、ICTやIoT、医療機器などの現場で培ったものづくり力を駆使し、経営と現場をつなぐコンサルタントとして、様々な製造業が幸せになるサービスを提供しています。

独立する前の会社員だったころは、忙しいときも、そうでないときも、疲れているときも、元気なときも、いつも同じ時間に会社へ行き、定時までいて、時に残業せざるを得ず、一定時間以上を必ず会社に拘束される日々。そんな時間の使い方を何とかしたいといつも考えていました。

私も妻もキャリアアップを目指して仕事をしているなか、子どもができて以降は特に、どうしても仕事や家事、子育てすべてに十分な時間を割り振ることは、物理的に不可能であると夫婦で常に悩んでいました。

家事はある程度効率化し、睡眠時間を削れば何とかこなせそうでした。しかし、子育てに関しては、2人とも朝早くから夜遅くまで仕事に出てしまい、平日においては、時間もなくて子どもとの会話もままならない。

このような状態で良いはずがないと考えていた矢先、子どもが小学4年生になるころに学童保育が終了。時を同じくして妻の時短勤務終了時期が迫ってきていました。

「いよいよどちらかが仕事を制限しないといけないかもしれない……。」 そんな考えも夫婦の脳裏によぎりました。

そのころ、妻はキャリアアップに向けて、まさに今から伸びていこうとする時期。私は何とか時間を作ろうと毎日定時帰宅を貫き、家庭で過ごす時間を作っていました。ただ、当時の私は管理職。残業する雰囲気のある職場で、毎日さっさと帰る上司について良く思われていないのでは……と、気をもんでいました。

その一方で、実は「将来、何かで独立をして仕事をしたい」という願望が昔からありました。子どもが小学1年生になるころ、「まずは世間に通用する国家資格があれば良いかもしれない」と考え、生産技術(FA技術)に関する技術士の資格取得にチャレンジ。何とか資格取得ができました。

この資格取得をきっかけに独立に向けて本格的に動き出し、今に至ります。現在は技術士事務所を立ち上げ、仕事を続けることができています。

さて、前置きが長くなりましたが、独立する前と後の、私の1日を紹介します。独立してスケジュールにも大きな変化がありました。 

【独立前】1日のスケジュール例

5時
起床し、洗濯物をたたむ。その後、家族の朝ごはんを作る。

6時
子どもを起こし、家族全員で朝ごはんを食べる。その後、食器の片づけ。洗いは食洗器にお任せ。

7時
子どもを学校に送り出す。時間があれば、軽い運動。身支度を整える。

8時
会社に移動
※ここから約10時間拘束。場合によっては残業でさらに長く……。

18時
退社し、子どもを迎えに行く。

19時
夫婦のうち早く帰宅した方が夕食作りをし、家族で夕食を食べる(たまに惣菜などを買うことも)。その後、食器の片づけを行う。

20時
何もなければ自由時間。

22時
就寝 

【独立後】1日のスケジュール例

5時
起床し、洗濯物をたたむ。その後、家族の朝ごはんを作る。

6時
子どもを起こし、家族全員で朝ごはんを食べる。その後、食器の片づけ。このあたりまでは独立前と一緒。

7時
車で妻を駅に送る。子どもを学校に送り出す。その後、メールやニュースのチェック。身支度を整える。

8時
集中力が必要な仕事を一気にやる。

9時
自宅から1時間ほどの事務所に、徒歩と電車で移動する。

10時
事務所で顧客と打合せ。

12時
軽い昼食を取ってから事務所で昼寝し、昼からの鋭気を養う。会食する場合もある。

13時
調査や情報収集業務、出張業務に関するスケジュール調整などを行う。

15時
自宅に移動する。帰りにスーパーで夕食の買い物をする。

16時
帰宅し、事務作業をしながら子どもの帰りを待つ。子どもの帰宅後、宿題で分からないところを一緒に考えたり、雑談をしたり。

17時
夕食作り。

18時
お風呂に入り、洗濯をする。このころ、妻が帰ってくる。

19時
家族全員で夕食を食べる。その後、食器の片づけを行う。

20時
何もなければ自由時間。仕事が溜まっていれば仕事をする。

22時
就寝

独立前後で変わったこと

独立してからは仕事の時間をある程度自分でコントロールすることができるため、家族、特に子どもと、時間や場所を共有することが圧倒的に増えました。特に夏休みなどの長期休みは顕著です。たまにうっとうしいこともありますが(笑)、一緒にいられる時間が長いとお互い感じていると思います。

子どもと一緒に過ごす時間の中での何気ない会話は、互いに何を考えているのかや何を悩んでいるのか、何に興味があるのかを知り合うきっかけになります。子どもが学び、考えるきっかけを与えながら、自分にも考えるヒントをもらう。そんな時間が過ごせています。

 独立がきっかけで、時間のバランスが整うこともある

誰しもが必ず、独立すれば時間のバランスがうまくいくわけではありません。時間を作ることが目的の独立では、肝心の仕事がうまくいきません。

ダイバーシティの時代に突入し、働きやすさを求めて会社を選ぶ時代が来ています。真の意味の働きやすさをキチンと考えて、仕組み化する会社も増えてきました。人によっては、もちろん独立する道を選ばずとも、時間のバランスを整えることは可能でしょう。

何を選ぶかはその人しだい。ただ、私の場合は独立するという選択が、自分の仕事に対する思いと自分の周りの環境に対する配慮を、両立させることができる方法だったというだけです。皆さんが自分にとって心地よい時間のバランスを工夫できるよう、一例として参考にしていただければ幸いです。

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