リプル代表の佐藤が、独立して活躍する技術者に独立の経緯や独立してみて感じることなどを聞く本企画。今回はソニー株式会社でキャリアを積んだ後、システム設計、デバイス設計、ソフトウェア設計及び商品企画を含む商品化全般のコンサルティング分野で活躍する本多氏にお話を伺います。

プロフィール

右が本多氏、左が佐藤

本多 隆(Takashi honda)

東海大学工学部電子工学科卒業後、1982年に新卒でソニー株式会社に入社。ビデオ事業部からキャリアをスタートし、様々な経験を経た後にB2Bビジネス領域で400人の陣頭指揮をとり、事業経営を遂行。7年間ほどPL責任を負う事業責任者として活躍した後、2011年から2013年までの3年間は事業部長として多くの利益を創出する。2014年7月に転職し、LG JAPAN LABにて画像処理、オーディオ、センサー関連等の新規開発分野でマネージメントを担当。また、日本向けTVの画質開発と品質管理全般の責任者も担い、幅広い領域で実績を出した後に独立。現在はデジタルデバイスの開発設計、設計プロセス、PMの総合的なコンサルティングなど、2社にて長期的なコンサルティング業務に従事。 

「最後まで諦めない」ために「楽しく仕事をする」

佐藤:新卒でソニーに入社した経緯を教えてください。

本多氏(以下、本多):私の場合、実はそこまで真面目な理由ではないんですよね(笑)。大学の電子工学科を卒業したので、まず電気系の会社に行きたいという思いが前提としてありました。当時はPCの普及が始まったばかりでしたが、だからといってPCの設計だけをしたいという志向ではなかったんです。ソニーは「ウォークマン」開発ストーリーの中で、担当者の提案でも商品プロジェクトが立ち上がる会社と聞き、志望したことを覚えています。あとは今だから言えることですが、自宅から近いということもポイントになりましたね(笑)。

今振り返ってみて思うと、少人数でプロジェクトに取り組むチャンスがある企業を求めて就職活動をしていたのかと思います。

佐藤:約30年ソニーにいらっしゃり、現在は独立してご活躍されていますよね。一つの会社でキャリアを積んでいくにあたり、大事にされていたことはありますか?

本多:部長として仕事をさせてもらっていた時に、よく部下に言っていたことがあります。それは、「世の中なんとかなる」ということです。言い換えると、「最後まで諦めないこと」ですね。

もっと言い換えると、最後まで諦めないということは「常に前を向いて楽しく仕事をする」ということです。意外に単純なことに聞こえるかもしれませんが、なかなか難しいんですよ。

佐藤:素敵な考え方ですね。ただ、どんな仕事でも楽しいばかりではなく、もちろん辛い局面も多いと思います。そんな中で、常にその心を持ち続けるためにはどうされていたんですか?

本多:私が参考にしてきたのは、今まで見てきた優秀なエンジニアたちに共通している行動特性です。みんな、ダメな日はすぐに仕事を切り上げていましたね。これは単純に早く帰ることが重要という訳ではなく、家に帰ってお風呂に浸かってリラックスするなど、あえてゆっくりした時間を過ごすことで良いアイデアが生まれることにつながるから。なので、私もそれにならい、極力ゆっくりする時間を作るようにしていました。そうすることで、常に健全な心持ちで仕事ができていたのではないかと思います。

自分のバリューを確信したのは独立してから

佐藤:独立にあたり、ポジティブに考えていた点とネガティブに考えていた点について教えてください。

本多:ポジティブだったのは、新たな出会いや環境への期待です。でも、ネガティブに思っていたことの方が大きかったですね。主には自分が別の職場でも通用するかどうかの不安を感じていました。私の場合、独立のきっかけは2度目の転職活動をしていた時にリプルさんからとある企業の案件を打診いただき、おもしろそうだと思ったことでしたが、自分が役に立てるか迷う気持ちもありました。

佐藤:本多さんほどの方でもそう思うんですね。独立をされてから、外で自分が活躍できると確信を持ったのはどんな時ですか?

本多:1回目の転職は先輩から誘われてのものでした。必要とされているところに行ったため、この転職では「どこでも通用する」という確信をまだ持っていたわけではありません。その後、独立するわけですが、直後は正直とても不安でした。独立してから初めて取り組んだプロジェクトには、エンジニアリングについて詳しい方が自分以外にもたくさんいる環境でした。私の場合、どちらかというとスペシャリストではなくゼネラリストですから、自分がそこでバリューを発揮できるか、とても懸念していましたね。

ただ、実際に仕事をやり始めてみると、ゼネラリストだからこそバリューを発揮できているなと思う瞬間が何度か出てきました。スペシャリストの方が多い組織だからこそ、全体を見ることのできる自分が必要とされる環境なんだと思ったんです。このあたりで、自分のバリューが確信になりましたね。

私のように、自分が培ってきたスキル等がどう役に立つかは、実際に動いてみないとわからないこともあると思います。

佐藤:独立してからライフスタイルの変化はありましたか?

本多:それはとてもありましたね!現在は週に2日~3日コンサルに行くスタイルで、毎日職場へ通うわけではないのでリフレッシュがしやすいです。メールのやり取りや事前準備なども自宅で行いますが、自分の裁量で全て行っており、自分自身が最も生産性を高められるであろうスケジュールを組んでいるため、メリハリが効いてますね。以前よりも集中力が上がったため、時間あたりの生産性が高まっています。

今までは朝の時間や土日しか自由な時間がなかったのが増えたわけですから、現在の方が心身ともに健康ですね。

独立前に大切なのは、自分の売り込み方をしっかり整理しておくこと

佐藤:これから独立する後輩へ伝えたいことは何かありますか?

本多:独立がしたいなら、自分が今まで培ってきたスキルやバックボーンをどう売り込むか、しっかりと整理してください。そうすれば、いずれ良い案件に巡り合えるのではないかと思います。また、スキルを売り込むにはまず、求められている仕事の理解をすることが大切です。理解してから自分の持っているスキルをどうマッチさせるか考えましょう。

あと全然違う話にはなりますが、個人事業主になると確定申告などの今までやってこなかったタスクがたくさん発生します。あらかじめ調べておかないと後から大変なことになります(笑)。

佐藤:ありがとうございました!

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