企業から独立して活躍する技術者へ、その人生の歩みや選択のタイミングをリプル代表の佐藤がインタビューする本企画。今回は東京大学卒業後、 凸版印刷株式会社にて表面技術関連のプロフェッショナルとして活躍、その後技術士事務所「ソメイテック」を立ち上げた大薗氏にお話を伺います。

プロフィール

左が大薗氏、右が佐藤

大薗剣吾(Kengo Ozono)

40歳、愛知県出身。東京大学大学院工学研究科マテリアル工学専攻。修了後、2005年に凸版印刷に入社。光学部材製造事業において、プロジェクタ用金型、液晶ディスプレイ用部材、半導体原版などの開発、生産技術に従事。多岐に渡り、表面技術関連の業務を経験。

その後2017年に開業し、技術士事務所「ソメイテック」を設立。現在はそれまでの経験を活かしながら、電子デバイスなどの薄膜系技術を中心に企業支援や開発を行っている。

若手技術者が経験を元に語る独立のリアルとは?

自営業の親を見て、若くして独立志向に

佐藤:定年を機に独立する人も多い中、40歳で独立されているんですね。独立組の中ではお若いほうかと思うんですが、なぜ独立したのですか?

大薗:私の親が自営業だったので、その背中を見て「独立」という働き方に対するイメージが、学生の時からうっすらとありました。具体的ではありませんでしたが、親の生き方というのはずっと意識していましたね。「将来自分も独立するんだ」という意志が昔からありました。

また、仕事で単身赴任が続き、全国各地への異動を経験したことも独立を意識した理由の一つです。企業で働く中で、働く場所を選べない不自由さを感じていました。

佐藤:そうなんですね。そもそも独立志向をお持ちの技術者の方は多いのでしょうか?

大薗:私の周りを見渡す限りは、独立をしようと考えるケースはあまりないように思います。まだ事例も少ないので、独立を意識する機会も少ないのが原因なんですかね。ただ、現在の業務で良いのか? という悩みを持つ人は多いです。

独立後の仕事の取り方、描いたイメージとのギャップ

佐藤:事例も少ない中、独立をするにあたって不安だったことはどんなことですか?

大薗:営業経験がないので、仕事を取れるかという心配が一番ありましたね。

佐藤:不安がある中で、仕事はどのようにとっていったのですか?

大薗:まず前提として「技術士」という資格を2015年に取得しており、それが開業にも大きく繋がっています。技術士の資格を持つ人たちの集いがあって、横のつながりができました。そこで開業に関する様々なアドバイスがあったので、営業をしてというよりは横のつながりから仕事を紹介してもらうケースが多かったです。

佐藤:実際に独立して、描いていたイメージとのギャップはありましたか?

大薗:はい。どの業種でも言えることかもしれませんが、自分自身をコントロールしないといけないことに苦労しました。何もかもが自己管理なので、怠けようと思えばいくらでも怠けられます。自分をいかに律されるかというところは大事です。

また、これはいい意味でのギャップですが、長時間の仕事もあるものの、仕事に対してのストレスや苦しさは減っています。

佐藤:業務量が増えていてもストレスが減っているのですね。何が糧になっていますか?

大薗:業務量が増えている理由は、自分の専門以外の仕事が発生するからなんですね。例えば、経費精算などのバックオフィス系の業務などです。会社に属していると技術以外のことをすることはほぼありませんが、独立するとそういうわけにはいきません。初めてのことばかりです。

毎回効率よく業務を遂行することはまだできていないですが、初めてのことに取り組むことを楽しめているからストレスになっていないです。

あと、独立って一人でするイメージありますが、実際は一人で何でもやるのはなかなか難しいです。今まで以上に仲間やパートナーを作れるようにならないと、個人で続けていくのは難しいですね。

プロ技術者へ向けた顧問業務紹介サービスの利用もおすすめ

顧問業務紹介サービス利用のきっかけ

佐藤:弊社と大薗さんのご縁は、弊社のデータベースが日本技術士会(※技術士で構成する社団法人)と連携していたことが始まりでした。取引先から案件を頂いた際に、良い技術者はいないかと登録者データベースの検索をしたところ、大薗さんを見つけたんです。

大薗:お声がけをいただき実際に佐藤さんとお会いしてみて、佐藤さんのやっていることに感銘を受けました。またお互いにスタートしたてで共感できる部分がとても多く、仲間意識が生まれましたね。

佐藤:私も仲間意識をとても抱きました。大薗さんと弊社は、切り口は違うものの実現したい未来が一緒です。この出会いを機に大薗さんの参加している勉強会に参加させてもらうなどもしている関係です。

弊社のビジネスは、最初は定年退職後に独立したシニア層の技術者をターゲットにしていましたが、大薗さんのように若い方で独立する人もいるんだなと学びました。また「技術者の働く自由を作る」という大薗さんの考え方はまさに弊社の目指す世界でもあります。

これからの時代は色々な働き方が広がっていきますが、製造業はまだまだ遅れています。もっともっと技術者が自分の経験を生かして、働ける環境や可能性を広げていきたいという思いをお互いに持っています。

大薗:初めて佐藤さんとお会いした際にすごく情熱やパワーをいただきました。この業界では若くて大きなエネルギーがある方は珍しいので、佐藤さんとの出会いは衝撃的でしたよ。

苦手な契約条件のやりとりもサポートで解決

大薗:実際にお仕事の担当いただいたリプルさんの営業の方には、契約後もかなり寄り添っていただけました。クライアントとの打ち合わせにも一緒に出席してもらい、我々のような専門家が言いにくい契約条件の話などを率先して伝えていただきました。たくさんのサポートをしてもらえ、とてもありがたかったです。

実を言うと技術者って、場を和ませたり雰囲気づくりや会議を上手にまとめたりすることが苦手なんですよね。意外と会議が長くなったり、要点がまとまらなかったりしてしまうんです。そういう部分もサポートしてもらいました。

リプルを利用して魅力を感じた点

佐藤:ちなみに、ハイクラス技術者に特化して業務を紹介しているサービスは他にあまりないかと思いますが、大園さんは他の顧問紹介系のサービスには登録していましたか?

大薗:そうですね、地方自治体も含めていくつか登録しました。他社の場合は案件リストという形で送ってただくことも多いですが、リプルさんの場合は大勢に対して発信しているというよりは、自分自身にちゃんと提案をしてくれていると感じました。

佐藤:すごく嬉しいお言葉ですね。弊社では技術者の方に寄り添うことをとても大切にしています。ですから、あえてシステマチックな効率の良い手段は選ばず、アナログな方法をとることもあります。

また、技術の世界はとても広いので細かくコミュニケーションを取らないと適切なマッチングはできません。これからもどんどん弊社に技術ノウハウを蓄積していき、より円滑なマッチングを実現させたいです。

「技術者の独立」についてそれぞれの立場から思うこと

佐藤:大薗さんはどのような未来を描いて独立されたのですか?

大薗:技術者の仕事ってすごく面白いですし、社会的にも価値ある仕事です。なので、技術者が活躍することは社会のためになります。もちろん、製造業の技術者としてやっていると業務そのものの大変さがたくさんあります。新製品の開発ができないという大きなプレッシャーを抱えることもあれば、人間関係で苦しむこともある。技術の世界で頑張りたいのに、組織や人間関係など相性の問題で最大限のパフォーマンスを発揮できないこともあります。そうなった時の解決策が現状は少ないと考えています。

「もっと自分自身で主体的に働ける文化があってもいいんじゃないか?」と思っており、今後は自身が体現することで他の技術者の選択肢を増やしたいです。若くから技術者として独立し活躍されている方は、実は数十年前からいらっしゃるのですが、ごく一部のためまだ世の中には知られていません。これからもっと「技術者の独立」というキャリア・文化を広めていきたいです。

独立したい技術者に向けてメッセージ

大薗:製造業でもっと独立する人が増えて欲しいです。IT業界だと独立する人が多いですが、製造業はまだまだ遅れています。これから副業、フリーランスなど働き方が増えていく中で、一歩踏み出す勇気を持って欲しいです!

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